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今からできる相続税対策とは?具体的な節税方法を紹介

相続

相続税対策はいつからでも始められます。そして気が付いた時点で早めに取り組めばそれだけできることは増えます。具体的な節税方法、そして納税負担に関する対策について解説していきますので、この記事を参考に将来起こる相続に向けて準備を進めていきましょう。

相続税対策1:納税資金の準備

相続財産のうち、現金・預貯金の割合が多くなければ、相続人が納税に対し大きな負担を負うことになってしまいます。そこで、財産の中に預貯金はいくらあるのか、現金でなくても、上場株式のような換金性が高い財産はあるか、といったことを把握しておきましょう。
そして納税額の試算を行い、納めるべき相続税が今のままで賄うことができるのかどうか、事前に確認しておくことが大切です。

特に相続財産として家や土地がある場合には要注意です。価額が大きい財産ですし、これら不動産は用途が限られています。そのため相続税の納税額が大きくなり支払うことができないという事態が起こり得ます。

そこで、納税額が減らすという観点のみならず、「納税資金を用意する」という対策も欠かせません。

被相続人となる方が事前にできる相続税対策としては、“不動産の売却”が挙げられます。手間のかかる作業ですし、これをあらかじめ行っておくことで相続人の納税資金の準備ができます。また、不動産の扱いに困るという事態も避けることができます。

財産を売却するときの注意点

納税資金の準備に向けて財産を売却するのは有効な手段の1つですが、売り急いでしまうと低い売却価格で処分してしまうこともあります。
特に不動産に関しては一般的にすぐに売れるものではありませんし、期間的な余裕をもって取り組むことが大切です。

相続税対策2:融資を受ける

相続人側での事後対応策となりますが、“融資を受ける”ことで納税資金を準備することも可能です。売却したくない財産がある、家にそのまま住み続けたい、といったニーズを満たしつつ納税資金を準備することができます。

ただ融資を受けるときには、借り入れに際して付される金利が相続税を延納したときの利子税より低くある必要があります。金融機関によって金利は異なりますし、融資を受けることで損をしてしまう可能性もありますので要注意です。

相続税対策3:生前贈与を行う

相続税対策の王道は“生前贈与”です。
相続税が掛かるなら、亡くなる前に子供や孫にあげてしまえ、と考える方も多いでしょう。
これは相続税を軽減することができる有効な手段です。なぜなら相続財産が少なくなれば当然相続税は少なくなるからです。
しかしこの行為は贈与となり贈与税が課税されてしまいます。贈与税は相続逃れを防止する為に高い税率が課されてしまいます。
生前贈与を行うときには相続税と贈与税のバランスを考慮しなければなりません。

110万円以下の贈与

贈与税の課税は暦年課税を採用しています。暦年課税は1月1日~12月31日までの1年間を課税期間として贈与された総額で課税します。
贈与税の課税を避ける簡単な方法は、「年間110万円の範囲で贈与を行う」という方法です。
贈与税における基礎控除額は年間で110万円です。これは贈与を受けた方1人1人に与えられています。
ただし、相続開始直前(相続開始前3年以内)に行われた贈与については110万円以下であろうと相続税の計算に含まれますので要注意です。相続が予期されたからといって急いで贈与を行っても意味がないケースがあります。
また、名義預金とみなされる場合があるので注意が必要です。
名義預金とは、例えば相続人の口座であっても実際に管理運用しているのは被相続人である場合をいいます。カードや印鑑は被相続人が管理していて相続人はその口座の存在も知らないといったケースがあります。
この場合は、被相続人の財産とみなされて相続税が課税されてしまう事になります。

なお、親や祖父母などから、住宅の取得資金・教育資金・結婚や子育ての資金を受けた場合には、一定額の範囲で110万円を超えても非課税という特例が設けられています。こうした特例も活用していけば相続税を大きく下げることは可能です。

相続税対策4:財産の評価額を下げる

相続財産自体を減らしていくという方向性で対策を取るのが生前贈与です。
これに対し、相続税の計算上、財産の評価額を下げることで納税額を減らすというやり方もあります。

効果の大きい主な手法として以下3つが挙げられます。

1.  小規模宅地等の特例の利用
2. 不動産を購入する
3. 不動産の活用方法を工夫する
4. 墓地や祭壇を購入する

小規模宅地等の特例の利用

「小規模宅地等の特例」とは、一定条件を満たす自宅や事業用の土地につき、相続税評価額が大幅に下げられるといった内容の特例です。とても節税効果が大きいため、宅地等がある場合にはこの特例の適用可否について検討することが欠かせません。
特例の適用については、申告期限までに申告しなければなりません。また、適用には複数の要件が存在する為、事前に確認しておくことをお勧めします。

不動産を購入する

近年、生前に不動産を購入する節税対策が多く行われています。特に代表的な方法はマンションを購入する方法です。マンションの購入がなぜ節税になるかというと、建物と土地の評価に関係があります。一軒家の場合は、その所有する土地が評価対象となります。それに対しマンションは複数の世帯が1つの土地を共同で区分所有することになりますので、一世帯当たりに所有する面積が少なくなり評価額が低くなるというのがマンション購入におけるスキームです。
ただし、相続発生後にすぐ売却したりすると明らかな租税回避行為とみなされて評価額を再計算させられる事があるので注意が必要です。

不動産の活用方法を工夫する

建物を賃貸用とした場合、固定資産税評価額から一定割合を引いて評価してもらうことができます。
土地を所有している場合も、その土地上に賃貸用の建物があれば借地権および借家権の分を考慮した評価額とすることができます。
使われていない不動産を、賃貸用にすることで建物、土地の評価額を下げることが可能です。
収益性とのバランスも考慮しつつ、不動産の活用について検討すると良いでしょう。

墓地や祭壇を購入する

墓地、霊びょう(仏壇等)、祭具は相続税の非課税財産とされています。
生前に現預金をそれらの財産に変えてしまうのは、1つの相続対策と考えられています。
ただ、あまりに高額な仏具(金の仏像)などは、投資目的と考えられ非課税とならない場合がございますので注意が必要です。

相続税対策5:法定相続人を増やす

課税遺産総額は、相続財産から基礎控除額や非課税財産を差し引いて算出されます。

基礎控除額から見ていきましょう。
そもそも相続財産の総額が基礎控除額を超えなければ相続税は課税されません。そして相続税に係る基礎控除額は、「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」で計算されます。つまり、法定相続人の数が増えるほど基礎控除額は増え、相続税も小さくなるという仕組みになっているのです。

非課税財産に関しても同様に考えることができます。
課税遺産総額を大きく減らすことができる非課税財産の例として、“生命保険の非課税枠”や“死亡退職金の非課税枠”が挙げられます。いずれも「500 万円×法定相続人の数」で算出することができます。

そのため、法定相続人の人数を増やすということは様々な観点から相続税の負担を軽減する方向に寄与するということです。

養子の人数に注意

肝心の法定相続人を増やす方法ですが、“養子縁組を行う”という方法があります。

ただし養子縁組で際限なく節税効果を高めることはできません。相続税の計算上、実子がいる場合には養子は1人まで、実子がいない場合でも養子は2人までしか法定相続人として扱うことができません。
これ以上の人数がいる場合でも相続人となり遺産分割を受けることはできるのですが、基礎控除額の計算などにはカウントできないということです。